学校法人の理事長の分掌変更の際の退職所得の処理は妥当
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:06/03/2008  提供元:21C・TFフォーラム



 学校法人の理事長に支払われた高校等の校長から大学の学長への分掌変更の際の退職金の所得区分が争われた事件で、大阪地裁(西川知一郎裁判長)は社会通念上、高校等の教育の現場から引退したというほかはないと認定、原処分を違法とする判決を言い渡した。

 この事件は、学園長、校長、幼稚園長の地位にあった学校法人の理事長が、定年で高校・中学校の校長の職を退いた後も、理事長・学園長・幼稚園長・大学学長の地位に就任していたことから、高校等の校長の退職に伴う退職金の所得区分が争われたもので、原処分庁が給与所得と認定、源泉所得税の納税告知処分をしてきたためその取消しを求めて提訴されていたという事案だ。いわゆる分掌変更に伴う退職金の支給が争点になったものだ。

 判決は、学長就任後の職務は校長在職時に比べ相当に軽減されているだけでなく、勤務形態自体が異なり、その内容・性質も代表者、最終責任者としての職務という点では本質的な相違はないものの、具体的な職務内容や自らの関わり方について相当異なるところがあると認定。また、学長としての職務に対する給与も校長就任時と比べ約30%減少している事実を踏まえ、給与面でも職務の量、内容、性質の変動が反映されているとも指摘した。

 その結果、校長の退職、学長の就任という勤務関係の異動は社会通念に照らしても、単に同一法人内における単なる職務分掌の変更といった程度にとどまらず、その性質、内容、処遇等に重大な変更があったといわなければならないから退職所得に該当すると判示、原処分は違法であるとして国側の主張を斥けている。国側が控訴を断念、事件は一審で確定した。レアケースだが、分掌変更に伴う退職金支給の際には参考となる判例であろう。

(2008.02.29 大阪地裁判決、平成17年(行ウ)第102号)