債権放棄当時、処分を協議中だったと認定、貸倒れを否認
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:08/20/2007  提供元:21C・TFフォーラム



 放棄した債権額を貸倒損失の額として損金に算入して法人税の申告をしたことの可否が争われた事案で、国税不服審判所は債権の放棄時点において債務者と審査請求人が70%完成した建物の処分を協議中であったことから、債権の回収が不可能だったとは認められないと判断、審査請求を棄却した。

 この事案は、建築・土木工事の請負等を業とする法人が二階建て三世帯住宅の建築に係る工事請負契約を交わして工事に着工した後、代金が支払われなくなったことから、施主が契約を解除してきたことが発端になったもので、未払いの工事代金2000万円余の支払いを求めたものの支払われなかったため、内容証明郵便によって再度、債権の支払いを督促したが、施主からは支払いがなかったという事案だ。

 そこで、内容証明郵便によって債権を放棄した上で、申告の際にその債権放棄額を損金に算入して申告したところ、原処分庁が否認してきたため、審査請求の上、その取消しを求めたというわけだ。つまり、債権放棄額が寄附金に該当するか否か争われていたという事案だ。

 これに対して裁決は、債権の債務者が施主である建物は約70%程度完成していて既に建物として成立し、何らの担保も設定されていないと指摘。また、債権放棄の前後を通じて、その処分についての協議が請求人を交えて継続されていたことからすると、債権放棄の当時において、建物自体に資産価値のないことが最終的に明らかとはなっていなかったとも認定。そうすると、債権放棄の当時、債権の回収不能の事態が客観的に明らかであったわけではないから、放棄した債権額は寄附金にあたると判断、請求を棄却している。

(国税不服審判所、2006.11.27裁決)