不法行為に伴う損害賠償請求権は訴訟を提起した時期の益金
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:04/01/2008  提供元:21C・TFフォーラム



 税務調査の際に発覚した従業員の不法行為(詐欺行為)によって、法人が取得した損害賠償請求権の益金算入時期の判定が争われた事件で東京地裁(定塚誠裁判長)は、従業員の詐取行為があった各事業年度の損害を被害者である法人は知ることができなかったのであるから、損害賠償請求訴訟を提起した事業年度の益金に算入するのが妥当と判示、原処分を全部取り消す判決を下した。

 この事件は、ビル清掃業等を営む法人が税務調査を受けた際に、調査官から6期にわたる架空外注費の計上を指摘され、経理部長の詐取行為に因るものであることが発覚したのがそもそもの発端。そこで、法人が経理部長を解雇、詐欺罪等で告訴したところ、起訴され、懲役4年の実刑判決が確定するとともに、他方の損害賠償請求訴訟では経理部長に対して1億8000万円の支払いを命じる判決が下り、確定した。

 にもかかわらず、原処分庁は外注費の架空計上であると否認、6期分について更正処分の上、重加算税の賦課決定処分をしてきたため、その取消しを求めて提訴していたという事案だ。原処分庁側は損害賠償請求権の実現が事実上不可能と認められない限り、損害が生じた事業年度の益金に含めるべきであると主張を展開、原告である法人側の訴えの棄却を求めていた。

 これに対して判決は、不法行為による損害賠償請求権は不法行為時に権利が客観的に発生するとしても、被害者が損害の発生や加害者を知らないことが多く、被害者側がそれを知らなければ権利が発生していたとしても、損害賠償請求権の行使は不可能と指摘。その結果、法人が不法行為を知った時に損害賠償請求権利が確定するものであるから、その事業年度の益金に算入すべきであると判示、原処分をすべて取り消す判決を下している。

(2008.02.15 東京地裁判決、平成18年(行ウ)第496号)