役員給与の内容は職務執行期間の全期間を一個の単位として判定
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:06/25/2013  提供元:21C・TFフォーラム



 代表取締役等に支給した役員給与のうち冬季賞与分の損金算入が認められる事前確定届出給与に該当するか否かの判断が争われた事件で東京地裁(川神裕裁判長)は、夏季賞与の支給額の減額を変更届出期限までに届出をしておらず、事前の定めに係る確定額を下回って支給されたことに特別の事情があるとも認められないと判示して、損金算入が認められる事前確定届出給与には該当しないと判断した。

 この事件は、超硬工具の製造・販売を営む法人が代表取締役等に支給した役員給与のうち冬季賞与分を事前確定届出給与として損金に算入して申告したのが発端。この申告に対して原処分庁が、冬季賞与は事前確定届出給与に該当せず損金算入は認められないと判断、更正処分の上、過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、法人側が原処分は判断を誤った違法な処分と主張、その取消しを求めて提訴した事案である。

 つまり原処分庁側は、冬季賞与が事前届出の通りに支給されているものの、夏季賞与は事前の定め通りに支給されなかったことを重視して、事前確定届出給与には該当しないと判断したわけだ。

 判決は、事前確定届出給与の趣旨に触れた上で、特別の事情がない限り、個々の支給ごとに判定すべきものではなく、職務執行期間の全期間を一個の単位として判定することが株主総会の決議の趣旨に客観的に適合すると解釈。個々の支給ごとに判定すれば、事前に複数回の支給を定めた後、個々の支給を事前の定めの通りにするか否かを選択して損金額をほしいままに決定し、所得金額を殊更に少なくすることにより、課税を回避するなどの弊害が生じないとも限らないため、課税の公平を害するという判断からだ。

 その結果、役員給与の支給額は全体として所轄の税務署長に届出がされた通りではなかったと認定。結局、夏季賞与が事前に定めた確定額を下回ったことに特別の事情があるとも認められないことから事前確定届出給与には該当しないと判断、法人側の請求を斥けている。

(2012.10.09東京地裁判決、平成23年(行ウ)第652号)