独立企業間価格は残余利益分割による算定が妥当と裁決
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:07/19/2011  提供元:21C・TFフォーラム



 国外関連者から製造・販売権に係る許諾の対価として収受するロイヤリティに対する独立企業間価格の算定方法が争われた事件で、国税不服審判所は残余利益分割法と同様の方法を適用して算定するのが相当であると判断、審査請求を却下した。

 この事件は、製品の製造・販売権を許諾する対価(ロイヤリティ)を国外関連者から収受している法人に対して、原処分庁が国外関連者との取引に係る課税の特例(措法66の4)を適用して法人税の更正処分等をしてきたため、法人側が取引価格は独立企業間価格であるとして、その取消しを求めていたもの。

 原処分庁は、請求人と国外関連者との使用許諾取引には比較対象取引が存在しないことから基本三法(独立価格比準法・再販売価格基準法・原価基準法)の適用ができないと判断、残余利益分割法と同等の方法によって独立企業間取引を算定して否認してきた。そこで請求人側が、他の国外関連者との使用許諾取引を比準の上、製品種別・技術が同種であり、使用許諾条件に差異はあるものの実質的には同様の状況にあるから、これを比較対象取引として「独立価格比準法と同等の方法」を適用できると主張して原処分の取消しを求めて審査請求したという事案だ。

 しかし裁決は、無形資産の使用許諾取引に「独立価格比準法と同等の方法」を適用する場合の比較対象取引の選定に当たっては、使用許諾に係る無形資産、使用許諾の時期、期間等の条件が同種であることが条件になると指摘。その条件の下で比較対象取引を確認すると、無形資産は同種であるものの、使用許諾の開始時期、期間、独占許諾・非独占許諾の許諾条件、技術派遣者の有無、販売地域という使用許諾条件が契約上も実態上も明らかに異なっていると認定。その差異は独立企業間価格に影響を及ぼし、差異に伴う具体的な影響額を調整することもできないため、請求人が主張する比較対象取引を使用して独立価格比準法と同等の方法を適用することはできないと判断、請求人の主張を斥けている。

(国税不服審判所、2010.06.28裁決)