回収不能か否かは債権者側の事情も踏まえ社会通念で判断
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:01/18/2005  提供元:21C・TFフォーラム



 住専会社の設立母胎の銀行が住専会社に行った債権放棄の可否が争われた事件で、最高裁(滝井繁男裁判長)は債権放棄の全額が放棄時点において回収不能な状態にあったと認定、放棄をした事業年度の損金算入が認められるべきであると判断して国側の主張を認めた控訴審判決を否定、旧興銀(現みずほコーポレート銀行)の全面勝訴の判決を下した。

 この事件は、住専会社に対する3760億円余の貸付債権を解除条件付きで放棄、法人税の申告の際にその債権相当額を損金に算入して欠損金額を132億円余として申告したことが発端になったものだが、原処分庁が損金算入を否認、法人税の更正、過少申告加算税、さらに重加算税の賦課決定処分をしてきたためその取消しを認めていたという事案だ。

 一審の東京地裁は、社会通念上、債権は回収不能な状態にあったと判断、旧興銀側の主張を全面的に認容する判決を下したが、二審の東京高裁は回収が不能な状態にあったとは認められないと判断、国側勝訴の逆転判決を下したことから、旧興銀側が上告、課税処分の取消しを求めていたというわけだ。

 最高裁は一審の藤山判決と同様、回収不能か否かは債務者の資産状況、支払能力等の債務者側の事情、債権回収に必要な労力、債権額と取立費用との比較考量、さらに経営的損失等の債権者側の事情、経済的環境も踏まえて社会通念に従って総合的に判断されるべきであると指摘。それにそって考えれば、既に住専会社に対する債権の回収は社会通念上不可能な状態になっており、債権放棄が解除条件付きでなされたか否かによって左右されるものでもなく、控訴審の判決は破棄すべきであると裁判官全員一致の判決を下した。

(2004.12.24最高裁第二小法廷判決、平成14年(行ヒ)第147号)