賃料設定は合意されたスキームによるものではないと認定、納税者勝訴
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:09/11/2007  提供元:21C・TFフォーラム



 リースバック取引による月1億円の地代家賃の設定は融資と違約金の回収が目的の合意されたスキームによるものとみなされ、寄附金認定されたことの可否が争われた事件で、東京地裁(杉原則彦裁判長)はスキームに合意があったとは認められないと判断、原処分を取り消す判決を下した。救済額は17億円相当額に上る判決となった。

 この事件は、土地買収の業務を受託したパチンコ店を営む原告法人の関連会社が契約を履行できずに23億円の違約金を抱えたものの、違約金の支払能力がないため、債務免除を内容とする即決和解したことが発端になったもの。

 その後、原告法人が買収委託先にパチンコ店等の資産を譲渡し、月額賃料を1億円とする賃貸借契約を交わしたが、これを原処分庁が、委託先の親会社と原告法人間が融資と違約金の問題を解決するための合意されたスキームによるものと認定、1億円の賃料のうち6000万円相当額は違約金債務の代位弁済金であるにもかかわらず賃料に仮装されたものであるから、通謀虚偽表示によって無効と否認してきた。つまり、地代家賃の設定が合意されたスキームであれば高額賃料で寄附金認定、合意がなければ損金算入という極めて事実認定の性格が強い事案でもあった。

 判決は、原告と相手方との間に協議・検討された形跡がなく、スキームの合意を前提にせずとも、リースバック取引の開始や経緯に関する合理的な説明は可能であるから、合意があったとは認められないと判断。また、賃料の設定については金融支援策の側面、場所的環境、パチンコ店の営業の特殊性、投下資金回収の危険性、建物や附属施設の転用困難性等を考慮すれば、合意がなければ月額1億円という高額賃料にはならなかった、とまでは言えないと指摘して国側の主張斥けている。事件は一審で確定した。

(東京地裁平成19年6月29日判決、平成17年(行ウ)第498号)