原処分庁による同業類似法人の抽出基準は妥当と判示、棄却
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:07/23/2013  提供元:21C・TFフォーラム



 死亡した取締役への弔慰金・退職金の支給額が過大か否かの判定が争われた事件で、東京地裁(定塚誠裁判長)は同業類似法人の抽出方法に触れ、抽出した地域が地理的に連続して一つの地域として共通性を有するとともに経済事情にも共通性が認められることを理由に合理性が認められると判断、法人側の請求を棄却した。

 この事件は、電気機械器具製造を業とする同族法人が、勤続年数35年の取締役の死亡に伴って支払った役員退職金を損金に算入して申告したところ、原処分庁が不相当に高額な部分は損金に算入されないと否認、更正処分の上、過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、法人側が提訴、原処分の取消しを求めたという事案である。

 法人側は最高功績倍率法が平均功績倍率法や1年当たり平均額法に劣ることはないと主張した上で、最終月額報酬が零のため、退職金の適正額を算定する際には功績倍率法よりも1年当たり平均額法のほうが納税者有利になるため1年当たり平均額法によるべきとも主張。さらに、TKCデータ類似同業法人の1年当たり役員退職給与額の最高額を参考に適正額を算定すべきであるという主張も展開して取消しを求めた。

 これに対して判決は、法人税法36条の「不相当に高額な部分の金額」の趣旨に触れ、高額か否かを判断する際の考え方を示した。その考え方に沿って、原処分庁が採用した役員退職金の算定方法、同業類似法人の抽出基準が合理的か否かを検討し、1年当たり平均額法も同業類似法人の抽出が合理的である限り、法人税法36条等に合致する合理的なものであると指摘。また、最終月額報酬が零のため、役員としての業務の従事状況を考慮すれば、平均功績倍率法を用いることが不合理であるも指摘した。

 その上で、同業類似法人の抽出方法については抽出地域が一つの地域単位として経済事情その他において一定の共通性を有していることから合理性があると認定した。結局、原処分庁側が採用した1年当たり平均額法、同業類似法人の抽出基準はいずれも合理的であると判断、法人側の請求を斥けている。

(2013.03.22 東京地裁判決、平成23年(行ウ)第418号他)