経済環境の変化を理由に挙げ、借地権の無償返還は相当と裁決
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:01/10/2012  提供元:21C・TFフォーラム



 借地権が設定された土地の法人から地主である役員への無償返還をめぐって、法人税に係る益金不算入の可否と役員賞与認定の可否判断が争われた事件で、大阪国税不服審判所は経済環境の変化によってやむを得ず借地契約を解消したものであり、借地権の無償返還は相当と判断して、原処分を全部取り消している。

 この事件は、建設機械用部品の製造業を営む審査請求人が借地権の設定されていた土地上の建物を地主である役員に譲渡したことが発端になったもの。その取引に対して原処分庁が建物の金額のみを授受しただけで、収受すべき借地権相当額の金額の授受がなかったことから、借地権の無償譲渡等として法人の益金に算入するとともに、役員への経済的利益の供与に当たるから役員賞与として損金不算入に当たると認定して、更正処分等をしてきたためその取消しを求めて審査請求したという事案である。

 つまり、原処分庁は建物が著しく老朽化したことには当たらないから、法人税基本通達13-1-14(3)が定めている借地権の消滅事由には該当しないと主張していたわけだ。

 これに対して裁決はまず、法基通13-1-14(3)が建物の老朽化を借地権の消滅事由に掲げていることを相当であると指摘した上で、建物を第三者に賃貸して居住用建物に供したり、売却処分して対価を得ることの実現可能性は低いと認定。また、請求人には建物及び借地権を保有することの必要性や経済性がなくなっているとも認定した。

 結局、借地権の無償返還は、経済環境の変化等によって従前の借地権上の建物をそのまま利用することが経済的に困難となり、やむを得ず借地契約を解消したものであって、法基通13-1-14(3)が定める借地権の消滅事由が存在すると判断して、原処分を全部取り消した。同時に、役員への認定賞与も取り消している。

(大阪国税不服審判所、2010.07.09裁決)