今年1月から3月までの主要裁決17事例をHPに掲載
カテゴリ:12.国税庁関係 トピック
作成日:10/04/2016  提供元:21C・TFフォーラム



 国税不服審判所は9月29日、平成28年1月~3月分の裁決事例を同所HP上にある「公表裁決事例要旨」及び「公表裁決事例」に追加し公表した。今回公表された裁決事例は、17事例(所得税5、法人税4、国税通則法及び相続税各3、登録免許税及び国税徴収法各1)と事例数も多く、また裁決の半数を超える10事例で納税者の主張が何らかの形で認められており、実務家にとっても参考となろう。

 このうち、法人税関係では、損害保険代理業及び生命保険媒介業を営む請求人が、請求人の代表取締役Eに対して支払った業務委託契約に基づく報酬を損金の額に算入して法人税等の申告をしたところ、同人は代表取締役に就任する前から法人税法上の役員に該当するため、その報酬は損金の額に算入されない役員給与に該当するなどとして、原処分庁が法人税の更正処分等を行った。これに対して請求人が、代表取締役に就任する前のEは法人税法上の役員に該当しないなどとして原処分の取消しを求めた事案が公表されている。

 この裁決で審判所は、1)代表取締役でなかったEが代表取締役として署名押印している契約書面があるからといって、代表者でない者が契約当事者になっているにすぎず、その内容も重要な業務に係るものとはいえないため、経営に従事していたことを裏付けるものとまでは認められないこと、2)Eが人事や資金計画に関わっていたことについて明らかでなく具体的に裏付ける証拠収集がなされていないこと、3)Eが請求人の経営に従事していたかどうかについて、役員や従業員に確認を行っておらず、経営に従事していたとする具体的な事実関係が証拠資料上明らかではないことなどを挙げ、代表取締役に就任する前においてEが法人税法上の役員に該当するとはいえないとして、納税者の主張を認めている。

 裁決事例集は、国税不服審判所が納税者の権利利益の救済を図るとともに、税務行政の適正な運営の確保に資する観点から、同期間中の裁決のうち先例となるような裁決について年4回公表している。 

 平成28年1~3月分の事例はこちら