一般口座保管の上場株式の価値喪失に伴う損失は必要経費に算入
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:06/03/2013  提供元:21C・TFフォーラム



 一般口座で保管されていた上場株式等の価値喪失に伴う損失を事業所得又は雑所得の計算上必要経費に算入できるか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、上場株式を含む株式の譲渡に伴う所得が事業所得又は雑所得に該当するのであれば、いわゆる一般口座保管の上場株式が株式としての価値を失ったことによる損失の金額を事業所得又は雑所得の計算上必要経費に算入できると判断、原処分を全部取り消した。

 この事件は、審査請求人が上場株式等の譲渡による所得金額の計算上、民事再生法の再生計画に基づき無償で消滅した株式の取得価額を必要経費に算入して申告したのが発端。しかし原処分庁が、株式の消滅に係る損失は特定管理株式等が価値を失った場合の株式等に係る譲渡所得等の課税の特例の適用はないから、株式の取得金額を取得費に算入することはできないと否認、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしてきた。

 そこで審査請求人が、同特例等の規定は無償で消滅した株式の損失が控除できる場合とできない場合とを合理的な理由なく不平等に取り扱うものであるから日本国憲法に違反するなどと主張して、各処分の全部の取消しを求めて審査請求したという事案である。

 これに対して裁決は、株式としての価値の喪失に伴い損失が生じた場合、その株式が事業所得に該当する場合は売上原価の計算を通じて自動的にその取得価額相当額が損失の発生した年分の事業所得の必要経費に算入される。また、雑所得に該当する場合は、雑所得の金額を限度にその取得価額相当額が資産損失として損失が発生した年分の雑所得の必要経費に算入される。さらに、その株式が譲渡所得に該当する場合の損失は所得金額の計算上考慮されないと指摘。

 しかし、請求人の上場株式等の譲渡による所得は事業所得又は雑所得と認められるから、株式としての価値の喪失による損失は株式等の譲渡による事業所得又は雑所得の金額の計算上必要経費に算入できると判断、原処分を取り消している。

(国税不服審判所、2012.09.25裁決)