建物を要しないことを理由に借入金利子の取得費算入を否定
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:09/09/2014  提供元:21C・TFフォーラム



 分離長期譲渡所得の金額の計算上、土地取得の際の借入金利子が取得費に該当するか否かの判断が争われた審査請求事件で国税不服審判所は、譲渡した土地に建物は存するものの、建物の使用が主な目的ではなく、建物部分も極めて僅かであることを理由に、所得税基本通達38-8の2の(1)のハに基づいて使用開始の日を判定することが相当であると判断、審査請求を斥けている。

 この事件は、審査請求人が分離長期譲渡所得の金額の計算上、土地の取得に要した借入金利子及びコンサルタント料を取得費に算入して申告したところ、原処分庁が取得費算入を否認、所得税の更正処分等をしてきたため、その一部取消しを求めて審査請求したという事案。

 請求人は、各土地の上に存する各建物を事業用に供したことがないから、使用開始の日の判定(所基通38-8の2(1)ロ)の取扱いから、借入金利子の全額が取得費に該当すると主張した。

 他方、原処分庁は、各土地に各建物は存するものの、その床面積の割合は僅かであり、同通達ロ及びハの定めに基づく判定に合理性は認められないから、各土地の使用開始の日は資産の種類、性質、形状その他外形的に判断できる利用の結果等客観的な事実に基づき総合的に判断すべきであるところ、借入れの日には既に各土地は使用されていたと指摘して、取得費に該当しないと反論した。

 しかし裁決は、各土地は放牧、牧草栽培を用途にした土地であり、各建物の使用が主な用途であるとは認められないこと及び各土地の地積のうち各建物が建築されている部分は極めて僅かであるところから、各土地は所得税基本通達38-8の2の(1)のハが定める建物等の施設を要しないものに該当すると認定。結局、同通達の定めにより使用開始の日を判定するのが相当であると判断、請求を斥けた。ただ、分離長期譲渡所得の金額が更正処分の額を下回ることから、結果的には一部取消しの形になった。

(国税不服審判所、2013.10.07裁決)