共同相続に係る賃料の帰属は遺産分割の影響を受けないと判断
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:01/26/2016  提供元:21C・TFフォーラム



 審査請求人ほか3人の相続人が相続した不動産の共有持分から生ずる賃料収入の全額が請求人のみに帰属するものであるか否かの判断が争われた事件で、国税不服審判所は、その全額が請求人にのみ帰属するものではないと判断、原処分庁側の主張を斥けた。

 この事件は、飲食業を営む請求人に対して原処分庁が、所得税の青色申告承認の取消処分をするとともに、飲食業に係る所得税の事業所得の金額並びに消費税等の課税売上の額、また賃料収入等に係る所得税の不動産所得の金額及び消費税等の課税売上の額について更正処分をした上で、所得税及び消費税等に係る過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分をしてきたため、請求人が原処分の全部取消しを求めて審査請求したというもの。

 賃料収入の帰属とともに、調査手続きの違法性、青色申告承認の取消事由の有無、推計課税の必要性、合理性が争点になった事案であるが、原処分庁側は、毎月振り込まれる賃料収入を不動産所得の収入金額として請求人が申告していること、原処分時又は異議申立時に、賃料収入を事業資金に充てた旨を申し立てたことを理由に、賃料収入等の全てが請求人の不動産所得及び課税売上げに当たるという主張をしたわけだ。

 これに対して裁決は、相続開始時から遺産分割時までの間に共同相続に係る不動産から生ずる金銭債権である賃料債権は、共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得し、その帰属は遺産分割の影響を受けないものと解するのが相当であると法令解釈した。

 そうした法令解釈を前提とする限り、各年分に生じた賃料収入等の全額が請求人に帰属するのではなく、法定相続分に応じて、請求人に2分の1、他の共同相続人に各6分の1の割合で帰属するものと認めるのが相当であると判断して、原処分庁側の主張を斥けた。なお、他の争点は請求人の主張がいずれも棄却されたが、審判所の認定額が原処分庁の認定額を下回る部分については一部が取り消されている。

(2015.06.19国税不服審判所裁決)