原処分に違法性はないと斥けたものの、必要経費性は認定
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:09/08/2015  提供元:21C・TFフォーラム



 事業所得の必要経費の計上漏れを理由にした更正の請求をめぐって国税不服審判所は、必要経費に関する説明資料の提出を待たずに行った原処分に違法性は認められないものの、請求人が支払った金員は必要経費に算入されると判断、原処分の一部を取り消した。

 この事案は、農業に基因する事業所得及び不動産所得を有する請求人の固定資産税相当額等の必要経費計上漏れを理由にした更正の請求に対して、請求人が当初申告の際に必要経費に算入した租税公課に関する帳簿書類等の提示がなく、支出事実ないしその具体的内容を確認できないことを理由に必要経費算入を否認、一部のみを認めただけだったため、全部取消しを求めて審査請求したもの。つまり、必要経費の内容を確認する書類の提出を待たずにされた原処分の違法性、必要経費性の有無が争点になった事案である。

 請求人側は、原処分庁からの当初申告に係る租税公課の内容を確認するための資料等の提出の求めに対して、提出の意思を示しているにもかかわらず、資料等の未提出を理由に更正の請求の一部を認めないとした原処分が違法な処分である旨主張した。

 これに対して裁決は、調査職員による電話・文書等による再三にわたる約1年間に及ぶ資料等の提出の求めにもかかわらず、資料の提出がなかったために、調査が打ち切られたと認定。そのため、原処分は原処分庁の合理的な裁量の範囲を超えておらず、違法性は認められないと指摘した。

 なお、請求人が審査請求の段階で提出した町費等の金員請求の旨が記載された文書を調査審理した結果、その文書は請求人所有の農地が所在する区長等が発行したものであり、文書に示された金員は同町区等において農地等の面積を賦課基準として徴収され、その用途は主に農地等の保全に係るものであると認められるから、事業所得の金額の計算上必要経費に算入されるべきであると判断、原処分を一部取り消した。
 
(国税不服審判所2014.12.04裁決)