純額方式による任意組合等の利益や損失の計算を妥当と判示
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:12/13/2011  提供元:21C・TFフォーラム



 出資先の任意組合等に生じた利益や損失の計算は純額方式によるべきか、総額方式によるべきかの判断が争われた事件で東京地裁(川神裕裁判長)は、課税上の弊害をもたらす事情もうかがわれず純額方式が認められると判断、納税者の主張を認容する判決を言い渡した。

 この事件は、出資先の任意組合等に生じた利益又は損失を所得税基本通達36・37共-20が定める純額方式により納付税額等を計算して申告したところ、原処分庁が総額方式により納付税額等を計算すべきであると否認して更正処分等をしてきたため、納税者がその取消しを求めて提訴したもの。原処分庁側は総額方式が原則であり、純額方式等が認められるのは総額方式による計算が困難な特段の事情がある場合や課税上の弊害が生じない限度において継続適用を条件に許容されているだけである、と主張した。

 これに対して判決は、同通達は所得税法の解釈を踏まえて任意組合等の組合事業に係る組合員の利益等の額の計算方法を明らかにし、所得計算方法の簡便化を図る趣旨で発出されていると指摘。しかし、原処分庁の主張は通達に文言として表示されていない要件を解釈として付加するものであり、通達解釈に関するものであるとはいえ、実質的には課税要件明確主義(租税法律主義)の趣旨に反するものであると批判、仮にその主張を採用しようとするのであれば、法律や政省令において明確に定めるべきであると指摘した。

 結局、原処分庁の主張には理由がなく、純額方式の適用条件である「継続して純額方式の方法により計算している場合」に該当すると認定、課税上の弊害をもたらす事情がうかがわれないことをも併せて考慮すれば、純額方式による計算を認めることが妥当と判示して原処分庁側の主張を全面的に斥けている。

(2011.02.04 東京地裁判決、平成21年(行ウ)第16号)