請負契約に係る収入金額の収入時期は役務提供の完了日と指摘
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:11/19/2013  提供元:21C・TFフォーラム



 事業所得の金額の計算上総収入金額に算入すべき金額及び消費税の課税標準額が幾らになるかが争われた事件で、国税不服審判所は請負契約に係る収入金額の収入すべき時期は役務の提供の完了した日になると指摘した上で、賦課決定処分は適用であるものの、過少申告加算税の額が審判所の認定額を上回っていたことから原処分を一部取り消した。

 この事件は、溶接業を営む審査請求人の所得税並びに消費税及び地方消費税に対して、原処分庁が所得税の青色申告の承認の取消処分を行った上で推計課税に基づく更正処分等をしてきたのが発端。そこで請求人が、事業所得の総収入金額に係る原処分庁の算定金額に誤りがあると指摘、その一部取消しを求めたという事案である。

 原処分庁は、請負に係る報酬が取引先に請求した時に収入すべき権利が確定していることから、事業所得の総収入金額に算入すべき金額はその年中に請求人が取引先に請求した役務の提供に係る対価の合計額になると主張して、審査請求の棄却を求めたわけだ。

 これに対して裁決は、請負契約の内容は取引先から指示されたブロックの溶接等を行うものであり、物の引渡しを要しない役務の提供であると認定。また、取引先が日々の作業時間から報酬額を算出し、既に完了した溶接等の報酬の支払いを請求人が随時請求することができたことから、日々の役務の提供が完了するごとに報酬請求権が発生して確定する旨の請負契約を締結していたと見るのが相当とも認定した。
 
 つまり、請負契約に基づく報酬請求権の収入すべき時期は役務の提供が完了した日の属する年分となり、事業所得の総収入金額は各暦年の1月1日から12月31日までの役務の提供に係る対価の合計額になるという判断だ。その結果、賦課決定処分は適法であるものの、各年分の所得税に係る過少申告加算税の額は審判所の認定額を上回っているため、結果的に一部取消しの裁決となった。

(国税不服審判所2013.03.25裁決)