納税地の判断を巡り権限のない行政庁による更正処分を違法と判示
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:03/19/2013  提供元:21C・TFフォーラム



 納税地の判断を契機に所得税の更正処分・差押処分の効力の適否が争われた事件で、東京地裁(八木一洋裁判長)は、事業所納税届出書を提出した原処分庁以外の行政庁による更正処分等には重大な瑕疵があるから、更正処分が無効である以上は差押処分も法的に無効と指摘、不当利得返還請求権に基づく滞納国税等相当額の返還請求を認容する旨の判決を言い渡した。

 この事件は、都内に事務所を有する公認会計士が居住地の税務署から更正処分等を受けたことから、事務所のある税務署に事業所納税届出書を提出しているため、居住地の税務署ではなく事務所のある税務署に更正処分等の権限があると判断、事務所のある税務署からの更正処分等は不存在、居住地の税務署による更正処分等は無効と主張、事務所所在地の税務署による更正処分等の不存在確認請求及び居住地の税務署による更正処分の取消請求を求めるとともに、不当利得返還請求権等に基づく損害賠償を求めて提訴したという事案である。

 原処分庁側は更正処分等の違法又は無効を主張するのであれば、取消し又は無効確認等の訴えによるべきであり、事務所所在地の税務署による更正処分等の不存在を確認する訴えは不適切と反論した。

 これに対して判決は、訴えの利益、原告適格性、不服申立前置については悉く却下。しかし、事務所所在地を納税地とする事業所届出書を提出したという士業側の供述等に不自然な点はないと指摘。また、士業としての納税地が事務所所在地の税務署管内にあることを確認した上で、原処分庁側が税務調査をしたことが推認できるとも認定した。

 さらに、士業の納税地が事務所所在地から居住地に異動した事実を認めるに足りる証拠もなく、居住地がある税務署による更正処分等は、権限を有しない行政庁による違法な処分と指摘して税務署側の主張を斥けた。その結果、差押処分等もまた法的に無効であることから不当利得返還請求を認容して、不当利得返還請求権の全額について遅延損害金を含む支払いを命じる判決を言い渡した。

(東京地裁平成24年11月9日判決、平成22年(行ウ)第682号)。