賃貸借契約の解約に伴う保証金の返還免除益は不動産所得
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:05/02/2011  提供元:21C・TFフォーラム



 賃貸借契約の合意解約に伴う保証金の返還義務の免除益が臨時所得として平均課税が適用されるか否かが争われた事件で、東京高裁(青柳馨裁判長)は原審と同様に、不動産所得に当たることから平均課税の適用を受けることはできないと判断して控訴を棄却するとともに、義務付けの訴えについても不適法であると判断して控訴を却下した。

 この事件は、夫の相続に伴い建物等の賃貸人の地位を承継した妻が提訴していたもので、賃貸借契約を賃借人と合意解約した際に、保証金の返還義務が免除されたことに伴う利益は臨時所得に当たり平均課税が適用されるべきと主張して減額更正の請求をしたところ、原処分庁が更正の請求には理由がない旨の通知処分をしたことが発端になったもの。しかし原審の東京地裁は、一時所得に当たるものではないから平均課税の適用を受けることはできないと判断して棄却したため、控訴して原処分の取消しを求めていたという事案だ。

 控訴審は、賃貸借契約の合意解除に伴う保証金の返還義務の免除益は、不動産所得を生ずべき業務の全部又は一部の休止、転換又は廃止その他の事由により業務の収益の補償として取得する補償金その他これに類するもので、業務の遂行により生ずべき所得に係る収入金額に代わる性質を有するものであるからその全額が不動産所得に当たり、一時所得には当たらないと解するのが相当であると判示して控訴を棄却した。また、減額更正の義務付けの訴えについても原審と同様に、不適法と一蹴、控訴を却下している。

(2010.09.30 東京高裁判決、平成22年(行コ)第163号)