貸付金利息の収入時期はそれぞれの年の末日と裁決
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:08/25/2015  提供元:21C・TFフォーラム



 子から母親への複数年にわたる金銭の貸付に係る利息の収入時期の判定が争われた事件で、国税不服審判所は、各年中の期間に対応する部分の金額に係る収入すべき金額はそれぞれの年の末日であると判断、原処分庁側の主張を斥けた。

 この事件は、歯科医師業を営む審査請求人が母親に対し複数年、複数回にわたって金銭の貸付けをしていたことに対して、原処分庁が、貸付金に係る利息は貸付当初からその履行期に至るまでに生じた利息の全額を、履行期の到来する年分の収入すべき金額にすべきと判断して所得税の更正処分等を行ったのが発端になったもの。そこで請求人が、収入すべき金額は履行期が到来した年中の期間に対応する利息のみである旨主張して、原処分の一部取消しを求めて審査請求したという事案である。

 請求人の主張に対して原処分庁側は、利息債権はその履行期が到来すれば権利が確定し、所得税法36条1項が定める「収入すべき金額」に当たるものと解され、所得税基本通達36-8(7)(事業所得の総収入金額の収入すべき時期)における「その年に対応するもの」とはその年に権利が確定したものをいうとの解釈を前提に、請求人が母親に貸し付けた金銭の利息は、その履行期にその全額が確定したものであるから、同通達により同日が利息の全額の収入すべき時期となると主張した。

 これに対して裁決は、貸付金利息は元本使用の対価であり、元本が返還されるまで日々発生するものであるから、特段の事情のない限り現実の支払いの有無を問わず、期間の経過によって直ちに利息債権が発生し、収入の原因となる権利も確定すると解釈。

 また、原処分庁が主張する通達は、期間対応計算を採用したものであるから、「その年に対応するもの」との文言は、その年における利息の計算期間の経過に対応するものと解するのが相当であるから、利息に係る収入金額のうち各年中の期間に対応する部分の金額に係る収入すべき時期はそれぞれの年の末日になると指摘。結局、貸付期間が終了した年の期間に対応する部分の金額に係る収入すべき時期は、貸付期間が終了した年になると判断して、請求人側の主張を認める裁決を言い渡した。

(国税不服審判所、2014.09.01裁決)