LPSへの出資に伴う損失金額の損益通算を最高裁が否定
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:08/04/2015  提供元:21C・TFフォーラム



 米国デラウェア州の法律に基づいて設立されたリミテッド・パートナーシップ(いわゆるLPS)が行う中古集合住宅の投資事業に出資した者が、不動産所得の金額の計算上、その事業から生じた損失を控除できるか、つまり損益通算が可能か否かの判断が争われた事件で、最高裁(千葉勝美裁判長)は控除することはできないと判断する一方で、過少申告加算税の賦課決定処分の取消請求に係る部分については控訴審に差し戻す旨の判決を言い渡した。

 この事件は、米国デラウェア州の法律に基づいて設立されたLPSが行う米国内の中古集合住宅の賃貸事業に係る投資事業へ出資していた者が、賃貸事業によって生じた所得は不動産所得に該当すると判断、その所得金額の計算上、生じた損失を他の所得金額から控除(つまり損益通算)して所得税の申告又は更正の請求をしたところ、原処分庁が不動産所得には該当せず、損益通算も認められないと否認、所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分、さらに更正すべき理由がない旨の通知処分をしてきたことから、納税者側それぞれその取消しを求めて提訴したのが発端。その結果、原審が納税者側の請求を認容したため、課税当局が原審の判決内容の取消しを求めて更に上告していたという事案である。

 これに対して最高裁は、不動産の賃貸事業により生じた所得はLPSに帰属すると認定する一方で、出資者らの課税所得の範囲には含まれないと解するのが相当とした上で、不動産の賃貸事業による所得金額の計算上生じた損失の金額を他の所得金額から控除することは認められない判示。結局、納税者敗訴で確定したわけだが、いわゆる正当な理由が認められるか否かについては、更に審理を尽くさせるため、控訴審への差戻しが言い渡された。

(2015.07.17最高裁第二小法廷判決、平成25年(行ヒ)第166号)