豪華客船を他人に利用させることで得た所得を雑所得と認定、棄却
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:01/07/2014  提供元:21C・TFフォーラム



 豪華客船の船室や船内施設の賃貸による所得が不動産所得、雑所得のいずれに該当するのかの判断が争われた事件で国税不服審判所は、レンタル利用者に対して単に一船室を利用させているだけでなく、相当程度のサービスと一体のクルーズを提供していると認定して、船室の賃貸によるものとは言えないから雑所得に該当すると判断、棄却した。

 この事件は、医療法人の理事長自らが使用できる船室及び船内施設を他人に利用させるなどして対価を得たものの、事業所得の金額の計算上、損失が生じたことから、その損失を他の各種所得から控除して確定申告をしたのが発端。この申告に対して原処分庁が、雑所得に関わる損失であるから他の各種所得からの控除はできないと否認、所得税の更正処分等をしてきたため、理事長側が不動産所得に係る損失であるから他の各種所得から控除できると主張して、更正処分等の全部取消しを求めた事案である。
 
 つまり、一船室の貸付けは船舶に係る居住権、船舶の上に存する権利の貸付けであるからその所得は資産性所得であり、役務の提供も僅かであるから不動産所得に該当すると反論した。しかし裁決は、レンタル利用者に対し単に一船室を利用させているだけではなく、相当程度のサービスと一体となったクルーズを提供しており、その業務に係る所得は専ら船舶の利用に供することで生じたものとは言えないから不動産所得には該当しないと指摘した。
 
 また、業務が営利性・有償性及び継続性・反復性を具備してはいるものの、業務の目的が毎年の維持管理費用を少しでも回収することにあって、年に4回程度外国送金依頼書に署名するのみである、従業員を雇用せず事務的設備を備えていない、医療法人の理事長として給与等を得て生活の資の大部分を法人から得ている、さらに自己資金の範囲内で業務を行っている――ことなどが認定でき、一般社会通念に照らして事業であるとは認められないから雑所得に該当すると判断して、審査請求を棄却している。

(国税不服審判所2013.03.27裁決)