転貸建物明渡時の受領金員は一時所得と判断、原処分を取消し
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:12/25/2012  提供元:21C・TFフォーラム



 賃借し、転借していた建物の明渡しの際に建物所有者から補償金として受領した金員が一時所得か不動産所得かの所得区分の判断が争われた事件で、国税不服審判所はその性質及び使途等が特定されていない金員であることから一時所得の収入金額に該当すると判断して、原処分を取り消した。

 この事件は、建物を賃借し転貸していた納税者(審査請求人)がその明渡しの際に建物所有者から受領した金員を、原処分庁が不動産所得に係る業務収益の補償として取得した補償金に当たることなどを理由に不動産所得の収入金額に算入すべきと判断、所得税の更正処分等をしたのが発端。そこで請求人が、建物所有者から受領した金員は転借人とともに建物を明け渡す際に受領した単なる明渡料又は協力金であり、全額が一時所得に該当すると反論、更正処分等の一部の取消しを求めた事案である。

 しかし原処分庁側は、建物の一部を賃借し転貸を行っていた請求人が賃借部分の明渡しの際に建物所有者から受領した金員は、転借人に明渡しの補償金として支払った金員を補償するための金員及びそれに類するものであるから不動産所得の収入金額になると主張した。つまり、受領した金員が不動産所得に該当するか、一時所得に該当するかが争点になった事案である。

 これに対して裁決は、受領した金員のうち転借人への支払金員に相当する金員は、請求人の不動産所得の必要経費を補填するものであるから、不動産所得の収入金額になると認定。しかし、受領した金員と転借人への支払金員に相当する金員との差額は、請求人の不動産所得に係る業務の収益若しくは支払金員以外の必要経費の補償等ではなく、性質及び使途等が特定されていない金員であると指摘した。

 その上で、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得であり、労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないことから一時所得の収入金額に該当すると判断して、原処分を取り消している。受領した金員の使途、賃貸借契約の解約合意に至る交渉の経緯等の事実が、所得区分の判断のポイントになった事案である。

(国税不服審判所、平成24年3月21日)