非上場株式の新株予約権の割当ては有利な発行価額と判断、棄却
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:04/08/2013  提供元:21C・TFフォーラム



 発行法人が役員に割り当てた新株予約権がいわゆる有利な発行価額による新株取得の権利に当たるか否かの判断が争われた事件で、国税不服審判所は新株の発行価額決定日の1株当たりの価額を算定すると発行価額を大きく上回ると判断、審査請求を棄却した。

 この事件は、法人が2名の役員に割り当てた新株予約権に対して、原処分庁が有利な発行価額による新株取得の権利を与えた場合に該当し、権利行使により取得した新株の権利に基づく払込みに係る期日の価額から権利行使に係る新株の発行価額を控除した金額は経済的利益つまり役員給与に当たるため、源泉徴収義務があるとして納税告知処分等をしたのが発端。

 そこで請求人側が、新株予約権の割当ては有利な発行価額による新株取得の権利を与えた場合に当たらないため役員に対する経済的利益の供与はないと反論、原処分等の全部取消しを求めて審査請求した事案である。つまり、各役員に対する新株予約権の割当ては、平成18年改正前の所得税法施行令84条(株式等を取得する権利の価額)が定める有利な発行価額による新株取得の権利には当たらない旨主張したわけだ。

 これに対して裁決は、請求人の株式は非上場株式つまり気配相場のない株式のため、売買事例及び類似する他の法人の株式の価額があるとは認められないと認定した上で、所得税基本通達23-35共-9(株式等を取得する権利の価額)の(4)に定める権利行使日等又は権利行使日等に最も近い日における発行法人の1株当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額により評価すべきと指摘。

 その結果、財産評価基本通達178(取引相場のない株式の評価上の区分)から189-7(株式の割当てを受ける権利等の発生している特定の評価会社の株式の価額の修正)に基づく評価が相当であることから、新株の発行価額の決定日における1株当たりの価額を算定すると新株の1株当たりの発行価額を大きく上回ると認定した。結局、役員に対する新株予約権の割当ては有利な発行価額により新株取得の権利に該当すると判断して審査請求を棄却している。

(国税不服審判所、平成24年3月15日裁決)