賃貸借契約の解約に伴う返還免除された保証金は不動産所得
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:11/22/2010  提供元:21C・TFフォーラム



 賃貸借契約を合意解約した際に賃借人から返還義務を免除された保証金が臨時所得として平均課税が適用される所得か否かの判断争われた事件で、東京地裁(八木一洋裁判長)は不動産所得であって一時所得には当たらないことから、平均課税の適用を受けることはできないと判断して原処分の取消請求をいずれも棄却するとともに、減額更正処分の義務付けを求める部分には却下する旨の判決を言い渡した。

 この事件は、夫の相続に伴い建物等の賃貸人の地位を承継した妻が、その賃貸借契約を賃借人と合意解約した際に、保証金の返還義務を免除されたことから、その利益を不動産所得に係る総収入金額に算入の上、いわゆる平均課税の適用を受ける旨の記載をせずに申告した後、臨時所得に当たり平均課税が適用されるべきと主張して更正の請求をしたことが発端になったもの。

 しかし、原処分庁が更正の請求には理由がない旨の通知処分をしてきたため、妻がその取消しを求めるととともに、減額更正処分の義務付けを求めて訴えを提起していたという事案だ。

 これに対して判決は、賃貸借契約の合意解約に伴って免除された利益(保証金)が原告(妻)が失った将来の賃料の補償に加えて残債務相当額も補償するものであるとしても、その全額が不動産所得に当たるということの妨げにはならないと指摘した上で、一時所得に当たるものではないことから平均課税の適用を受けることはできないと判断。しかも、原処分が取り消されるべきものではない以上、義務付け訴えの要件を欠いていることから不適法として義務付けの訴えを却下するとともに、原処分の取消請求についてはいずれも理由がないとして原告の請求を悉く棄却する判決を言い渡した。

(2010.03.26 東京地裁判決、平成20年(行ウ)第588号)