不当な診療報酬請求の返還債務等の必要経費算入を否定
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:05/08/2012  提供元:21C・TFフォーラム



 自ら経営する病院が不当な診療報酬請求をして受領した金員の返還債務とその不正請求に係る加算金を、事業所得の金額の計算上、必要経費に算入できるか否かの判断が争われた事件で、東京高裁(市村陽典裁判長)は原審と同様、事業所得を生ずべき業務に伴って生じた費用には当たらないと判示、控訴人である医師側の請求を斥ける判決を言い渡した。

 この事件は、自ら経営する病院が不当な診療報酬請求をして受領した金員の返還債務と不正請求に係る加算金を課された者が、自らの事業所得の計算上、その金額相当額を必要経費に算入して申告したのが発端。しかし原処分庁が、返還債務のうち現実に履行していない部分の金額及び加算金も必要経費に算入することはできないと否認して更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、医師側がその取消しを求めて提訴したところ、一審の東京地裁が棄却したことから、控訴して再度その取消しを求めていた事案である。

 控訴審は、まず返還債務は現実に履行した場合の部分に経済的成果が失われ、これにより生じた損失の金額を必要経費に算入することができるにとどまると指摘した上で、未履行債務の金額を含めた返還債務の総額が「事業所得を生ずべき業務に伴う費用」に当たるということはできないと判示した。

 また加算金についても、事業所得を生ずべき業務に関連して故意又は重大な過失によって他人の権利を侵害したことにより支払う損害賠償金又はこれに類するものに該当するというべきであるから、必要経費に算入することはできないと判示して、控訴人の取消請求を斥ける判決を言い渡している。

(2011.10.06東京高裁判決、平成23年(行コ)第26号)