準備的・補助的な場所ではないため、恒久的施設に該当すると判示
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:01/05/2016  提供元:21C・TFフォーラム



 輸入品のネット販売事業の用に供していたアパート及び倉庫が、日米租税条約上の恒久的施設に該当するか否かの判断が争われた事件で東京地裁(増田稔裁判長)は、販売事業のための準備的又は補助的な性格の活動の場所ではなく、唯一の販売拠点としての役割・機能を担っていたことから恒久的施設に該当すると判断して、納税者側の請求を斥けた。

 この事件は、海外から輸入した自動車用品を専ら国内の顧客向けにネット販売していた所得税法上の非居住者に対し、原処分庁が販売事業の用に供していたアパート及び倉庫は日米租税条約上の恒久的施設に該当するため納税義務があると認定、所得税の決定処分及び無申告加算税を賦課決定してきたのが発端となった。

 これに対して納税者側が恒久的施設に該当しないため、日本国内の所得税の納税義務も生じないと反論して、原処分の取消しを求めて提訴したという事案である。つまり、日米租税条約が恒久的施設に含まれない旨を定めた規定は、準備的又は補助的な性格の活動を例示したものにすぎないという解釈からだった。

 これに対して判決も、日米租税条約の規定は準備的又は補助的な性格の活動の例示であり、恒久的施設から除外されるためには、その場所での活動が準備的又は補助的な性格であることを要すると解釈。しかし、非居住者が企業のHP等に所在地及び連絡先としてアパートの住所や電話番号を掲載して販売活動を行い、アパートや倉庫に保管された在庫商品を販売するという事業形態をとっていることから、販売事業の唯一の拠点(事業所)としての役割・機能を担っていたと認定。

 また従業員が、通信販売事業における商品の保管、梱包、配送、返品の受取等をアパート等で行っていたことを見ても、販売事業にとって準備的又は補助的な性格の活動の場所であるとはいえないとも認定。結局、そうした活動は準備的又は補助的な性格として掲げた日米租税条約のいずれにも該当せず恒久的施設に該当すると判示、納税者側の請求を斥ける判決を言い渡している。

(2015.05.28東京地裁判決、平成24年(行ウ)第152号)