居住者ではあっても非永住者と判示、原処分を一部取消し
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:10/01/2013  提供元:21C・TFフォーラム



 米国内に住居を有する者が所得税の確定申告が無申告だったことを契機に、日本の居住者及び永住者に該当するか否かの判断が争われた事件で、東京地裁(川神裕裁判長)は各課税年における居住者該当性を認める判断は下したものの、高額な保険料を支払って米国の医療保険への加入を継続している等々の事実認定を踏まえ、永住者であることを前提にされた無申告加算税等の課税処分は違法である旨の判決を言い渡した。

 この事件は、非居住者であることを理由に所得税の確定申告をしなかった納税者に対して、原処分庁が居住者に該当することなどを理由に無申告加算税の決定処分及び過少申告加算税の賦課決定処分等をしてきたことから、納税者側が非居住者若しくは非永住者であることを理由に、課税処分の取消しを求めて提訴したもの。

 居住者であっても国内への永住意思がなく、かつ引き続き5年以下の期間、国内に住所又は居所を有する個人の場合、国内源泉所得及びそれ以外の所得で国内で支払われ、又は国外から送金されたものについてのみ納税義務を負う。そこで、居住者かつ非永住者にあたらないことを前提にした課税処分は違法であると主張して、各課税処分の取消しを求めたという事案である。

 判決はまず、居住者該当性については客観的事実に基づき総合的に検討した結果、日本の居住者に該当すると判断した。しかし、非永住者に該当するか否かについては、1)過去に家族とともに米国の永住権を獲得、2)米国の医療保険に加入する一方で日本の国民健康保険の加入を中止、3)米国内の運転免許を所持する一方で日本国内の運転免許は不所持、4)米国の確定拠出型の企業年金に加入――している等々の事実関係から米国に永住する意思を持っていたと推認して、非永住者であるという判断をした。

 結局、各課税年において納税義務を負うのは国内源泉所得に限られ、居住者かつ永住者であるとことを前提にした課税処分の部分は違法であるという判断を下している。

(東京地裁平成25年5月30日判決、平成21年(行ウ)第310号)