商法上不適当な配当も所得税法上の利益配当に当たると解釈
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:08/23/2011  提供元:21C・TFフォーラム



 海外の会社が売却した動産等の代金の一部が会社の唯一の株主(原告)に送金されたことをめぐって、それが配当所得に該当するか否かの判断が争われた事件で、東京地裁(川神裕裁判長)は原告に送金された金員は海外の会社の一応の損益計算上の利益を株主たる地位に基づいて供与されたもので、配当所得に該当すると判断、取消請求を棄却した。

 この事件は、海外のある国の法律に基づいて設立された会社が売却した不動産・家具等の代金の一部が、唯一の株主である原告に送金されたことに対して、原処分庁がその金員を原告に対する配当所得と認定、更正処分の上、無申告加算税賦課決定処分をしてきたため、その取消しを求めて原告の株主側が提訴していた事案。つまり原告側は、不動産等の売却に伴う収益が海外の会社に形式上属するものの、実質的には原告に帰属するから配当所得にはなり得ないと主張して、課税処分の取消しを求めていたわけだ。

 しかし判決は、不動産の譲渡による収益は海外の会社に属すると認定の上、所得税法上の利益配当は商法が前提とする取引会社における利益配当の概念と同一の概念を採用しているものと解するのが相当であり、必ずしも商法に従って適法にされたものに限らず、商法が規制の対象とし、商法の見地からは不適当とする配当も所得税法上の利益配当に含まれると解釈した。

 つまり、法人がその利益から、株主等に対して株主等たる地位に基づいて供与する利益は、その名目に関わらず利益の配分たる配当所得に含まれると解することができるというべきであり、商法の見地から不適法なものもこれに該当することからすれば、株主等たる地位に基づいて供与された利益は、株主に対して取引上の債権債務関係など他の原因がないにも関わらず供与されたものであれば、これを満たすと解するのが相当と判示した。結局、原告に送金された金員は、海外の会社の一応の損益計算上の利益を株主たる原告に供与したものであって配当所得に該当すると解釈、原告の主張を棄却している。

(2011.05.31 東京地裁判決、平成21年(行ウ)第630号)