株式の担保権の実行に伴いみなし配当所得が発生したと認定
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:09/14/2010  提供元:21C・TFフォーラム



 法人からの借入れに際して担保財産として提供した同法人の株式に担保権が実行されたことに伴い自己株式の取得に伴うみなし配当所得金額が発生したか否かの判断が争われた事件で、さいたま地裁(遠山廣直裁判長)は自己株式の取得に伴うその株式に係る資本金の額を超える部分は所得税法25条1項5号が定めるみなし配当所得に該当すると判示、納税者側の主張を棄却する判決を言い渡した。

 この事件は、原告(納税者)がした確定申告に対して税務署長がみなし配当所得の申告漏れがあると指摘、総所得金額の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、原告側がみなし配当所得は生じておらず、仮に同所得が生じていたとしてもそれは非課税所得に該当することから原処分は違法であると主張、更正処分等の取消しを求めていたという事案。

 つまり原告側は、原処分庁が株式の金額を客観的に算出することなく、法人が算出した数字を前提に原告が担保権実行によって得た収入額を算定するのは誤りであり、これに基づいて原処分庁が課税対象として計算した金額も誤りであるから、仮に株式が法人によって取得されていたとしても、更正処分は違法であると主張していた。

 これに対してさいたま地裁は、自己株式の取得によって金銭その他の資産の交付を受けた場合(所法25(1)五)には、金銭その他の資産の交付のみならず、同様の経済的成果をもたらす債務の消滅等があった場合も含むと解釈。その結果、原告が担保権の実行によって得た金額から資本等の金額のうち担保権が実行された株式に対応する部分を差し引いた金額はみなし配当にかかる所得として課税対象になると判示するとともに、株式の評価方法も妥当であり、資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難な状態にあったとも認められないと判示して、課税処分は妥当である旨の判決を言い渡した。

(2009.11.25さいたま地裁判決、平成年21年(行ウ)第6号)