年金型保険金の取扱いをめぐる事件は納税者勝訴の判決で確定
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:07/12/2010  提供元:21C・TFフォーラム



 年金タイプの分割で支払われる保険金が雑所得として所得税の課税対象になるのか否かの判断が争われた事件で最高裁(那須弘平裁判長)は、各支給額のうち被相続人死亡時の現在価値に相当する部分は相続税の課税対象となるため、所得税法9条1項15号が定める非課税所得になると判示して控訴審判決を破棄、納税者勝訴の逆転判決を下した。

 この事件は、年金払特約付きの生命保険契約の被保険者だった夫の死亡に伴い、分割払いで保険金の支払いを受けた妻に対して、原処分庁が年金部分から必要経費を控除した額を雑所得として総所得金額に加算するなどの更正をしてきたため、妻側が年金部分はみなし相続財産となる保険金に該当するから非課税所得になると主張して原処分の取消しを求めたところ、一審の長崎地裁は二重課税になるとして納税者側の主張を認容した。しかし、控訴審の福岡高裁は年金と年金受給権は法的に異なり、支分権に基づくものであるから雑所得に該当すると判示、国側に軍配をあげたため、妻側が上告していたという事案だ。

 これに対して最高裁は、所得税法9条1項15号は同一の経済的価値に対する相続・贈与税と所得税の二重課税を排除したものと解釈。また、年金の方法で支払いを受ける保険金は基本債権としての年金受給権を指し、定期金給付契約に関する権利に当たるとも解釈。さらに、支払いを受ける保険金(年金受給権)のうち、有期定期金債権に該当するものは残存期間に受けるべき年金の総額に所定の割合を乗じて求められる年金受給権の価額として年金受給権の取得時の時価、つまり相続税の課税対象になると指摘した。その結果、年金の各支給額のうち被相続人の死亡時における現在価値に相当する部分は相続税の課税対象となる経済的価値と同一であり所得税の課税対象にはならない判断、控訴審を破棄した。

 なお、生保会社の源泉徴収は適法であるから、納税者が所得税の申告等の手続きにおいてその全部若しくは一部の還付を受けることが許されるとも判示している。

(平成20年(行ヒ)第16号、平成22年7月6日第三小法廷判決)