被った損失が総所得の10分の1未満のため雑損控除の額は零と判断
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:04/15/2014  提供元:21C・TFフォーラム



 預金通帳等の盗難に伴う損失が、実質的にみて雑損控除の対象となる盗難による損失に当たるか否かの判断が争われた事件で、国税不服審判所は、雑損控除の対象となる盗難による損失に該当するものの、損失金額が総所得金額の10分の1を超えないことを理由に雑損控除額は零円になると判断、結果的に一部取消しとなる裁決を下した。

 この事件は、アパートの貸付業を営む審査請求人が5年分の確定申告をしていなかったため、原処分庁が調査結果に基づいて貸付業に係る不動産所得金額を推計、所得税の決定処分及び無申告加算税の賦課決定処分をしてきたのが発端。そこで請求人が、雑損控除の対象となる損失が生じているから課税所得はないと反論、原処分の全部取消しを求めて審査請求したという事案である。

 雑損失の繰越控除の適用可否、また各車両の損失や金員の損失に、雑損控除の適用があるか否かということに争点があったわけだが、原処分庁側は、所得税法71条1項に規定する雑損失の繰越控除の適用を受けるための手続要件を満たしていないと指摘して、当初の損失を翌年分以降の総所得金額の計算上、繰越控除することはできないと反論、審査請求の棄却を求めていた。

 これに対して裁決は、預金者以外の者が行った不正な払戻しにより預金者が被った損失は、預金通帳等の窃取に起因し、預金者の意思に基づかない事由によるものであるから、実質的にみて預金者の資産が盗難により生じた損失と評価するとともに、雑損控除の対象となる盗難による損失に当たると解するのが相当と認定した。しかし、雑損控除の対象となる盗難による損失とは認められるものの、その損失の金額が総所得金額の10分の1を超えないため、雑損控除の額は零円になると判断、結果的に一部取消しの形になった。

(国税不服審判所、2013.04.22裁決)