外国子会社合算税制の適用除外記載書面の不添付を理由に棄却
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:01/24/2017  提供元:21C・TFフォーラム



 タックスヘイブン国にある法人の発行済株式を100%保有する者に対して、外国子会社合算税制を適用して更正処分をしたことの適否が争われた事件で東京地裁(舘内比佐志裁判長)は、確定申告書に外国子会社合算税制の適用除外記載書面の添付がないことを理由に適用除外規定は適用されないと判示する一方、納税猶予申請に対する不許可処分等にも違法はなかったと判示して、納税者側の請求を棄却した。

 この事件は、海外の法人の発行済株式を100%保有していた者が、外国子会社合算税制の適用はないものと判断して所得税の確定申告をしたところ、原処分庁が否認、課税対象留保金額に相当する金額は雑所得に算入されると判断して更正処分及び賦課決定処分をしてきたのが発端となった。

 そこで納税者側が、原処分の一部取消し及び賦課決定処分の取消しを求める一方で、納税猶予の申請をしたところ不許可処分さらに差押処分をされたため、その取消しも求めて提訴した事案で、納税者側は短期間のみの居住者の地位を取得した者に対し、それ以前に非居住者として海外で上げた利益に対して、硬直的・形式的に外国子会社合算税制を適用するのは措置法の趣旨を考慮していないと指摘、適用が除外されると主張した。

 判決は、外国子会社合算税制の趣旨に触れた上で、同税制の適用が除外されるか否かは適用除外規定(措法40の4(4))が適用されるか否かによって判断されるべきであり、納税者側の主張をもって適用が除外されることはないと指摘。その適用除外規定が適用されるのは、申告書に適用除外記載書面を添付し、かつその適用があることを明らかにする書類その他の資料を保存している場合に限られるとも指摘した。

 さらに、その趣旨にも触れ、納税者の意思を明らかにさせ、根拠となる資料を保存させることで、課税庁が適用除外要件の該当性を適正かつ迅速に判断できるようにしたものであり、租税法律関係を早期に確定させるということにあるという解釈を示した。

 しかし、納税者側が提出した確定申告書には適用除外記載書面が添付されていなかったのであるから、外国子会社合算税制の適用除外規定は適用されないと判示して、納税者側の主張を斥けた。なお、納税猶予申請に対する不許可処分等の徴収処分等にも違法性はないと判示して、棄却している。

(2016.05.13東京地裁判決、平成26年(行ウ)第501号)