米国のLPSは我が国の租税法上の法人に該当しないと判決
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:10/18/2011  提供元:21C・TFフォーラム



 米国で設立したLPSの不動産賃貸事業に係る損失を不動産所得の損失として損益通算が可能か否かの判定が争われた事件で、東京地裁(川神裕裁判長)はLPSに法人格が付与されているとは言えず、損益帰属主体として設立が認められてもいないと判示して国側の主張を棄却、昨年12月17日の大阪地裁とは全く反対の判決を言い渡した。

 この事件は、外国信託銀行を通じて米国デラウェア州に設立された不動産賃貸業を営むLPSに出資したのが発端。賃貸不動産の減価償却費と支払利息が賃料収入を上回るため生じた損失を原告(出資者)らの不動産所得の損失として他の所得と損益通算の上、所得税の申告をしたところ、課税当局がLPSは法人に該当するため不動産所得の損失に当たらず損益通算も認められないと否認してきたため、原告らが課税処分の取消しを求めて提訴していたというのが事件の概要だ。

 つまり、LPSが我が国の租税法上の法人に該当するか否かがポイントになっていたわけだ。法人であれば損益が帰属するため他の所得との損益通算は認められないが、法人でなければ構成員課税となり、損益通算が認められるからだ。

 判決は、デラウェア州に設立されたLPS法は我が国の租税法上の法人を意味する概念とはいえず、同法に準拠して組成されたLPSが法人格を有すると認めることができるその他の法令の規定はないと判断。しかも、同法が規定する設立・組織・運営・管理等に着目して経済的・実質的にみても、明らかに我が国の法人と同様に損益帰属主体として設立が認められたとはいえないとも指摘した。

 また、準拠法である法律の明文規定の有無以外に、法人と民法上の組合(任意組合)や権利能力のない社団とを截然と区別する明確な一般的な基準は見出し難いとも指摘して、国側の主張を斥けている。判決内容を不服として国側は控訴したため、その判断は控訴審に移っている。

(2011.07.19 東京地裁判決、平成19年(行ウ)第178号)