慰安旅行費用相当分を経済的の利益と認定、棄却
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:10/30/2013  提供元:21C・TFフォーラム



 慰安旅行として企画された海外旅行が、従業員に対する経済的利益の供与つまり給与等の支払いに該当するか否かの判定が争われた事件で東京地裁(川神裕裁判長)は、従業員が供与を受けた経済的な利益となる各従業員分旅行費用の額が少額と認めることもできないことを理由に、法人側の主張を斥けた。

 この事件は、土木建築工事の請負業を営む法人が従業員らを対象に行った中国への慰安旅行が発端になったもので、原処分庁が慰安旅行費用相当額を経済的利益の供与(給与)と認定、所得税の納税告知処分及び不納付加算税の賦課決定処分をしてきたため、法人側がその取消しを求めて提訴した事案。法人側は、旅行への参加・不参加の選択が与えられておらず、私的な自由旅行とは区別されるべきであるから、各従業員分旅行費用の額がそのまま経済的利益の供与にはならないと主張して、原処分の取消しを求めたわけだ。

 しかし判決は、従業員は旅行への参加によって、使用者から旅行に係る経済的な利益の供与を受けたと認定した上で、旅行に係る経済的な利益は旅行が実施された期間に各従業員に収受され、所得の実現があったとみることができ、旅行に係る経済的な利益も旅行の実施時に実現したものとするのが相当と判断した。
 
 また、旅行が現場作業員の指揮命令系統を強化し、操業の安全と能率の増進を図るという業務上の必要に基づいて、各従業員に参加を強制させたものであるという法人側の主張も否定、各従業員に供与した旅行に係る経済的な利益につき通常支払われるべき対価は各従業員分旅行費用の額であると認めることができ、各従業員が供与を受けた経済的な利益の額は各従業員分旅行費用の額とするのが相当であるとも指摘した。
 
 結局、慰安旅行に伴って享受した経済的な利益の額が少額なものとも認められず、通達が定める「役員又は使用人のレクリエーションのために社会通念上一般的に行われていると認められる」行事にも該当しないと判示して、請求を斥けている。

(東京地裁平成24年12月25日判決、平成23年(行ウ)第385号)