株式25%超保有でも株式保有特定会社に該当しないと判示
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:06/19/2012  提供元:21C・TFフォーラム



 25%以上の株式を保有する大会社が財産評価基本通達上の株式保有特定会社に該当するか否かの判定が争われた事件で、東京地裁(八木一洋裁判長)は、株式保有特定会社の株式保有要件を満たしていたとしても、株式の評価額と時価の開差を利用した租税回避行為の弊害までを危惧しなければならないとまでは言い難いと判示、国側の主張を斥けた。

 この事件は、財産評価基本通達上の大会社に相当する会社の株式を相続したことを踏まえて相続税の申告をしたところ、原処分庁が申告内容を否認、更正処分の上、過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、その取消しを求めて相続人らが提訴した事案。

 相続人らは、原処分庁が相続財産である株式の評価額を誤っているのは相続税法22条違反であり、仮に誤りがなかったとしても、相続税額が過少だったことには国税通則法65条4項の「正当な理由」が認められるべきと主張して、原処分の取消しを求めた。

 判決は、株式保有割合が25%以上の大会社を一律に株式保有特定会社とする判定基準は創設当時の平成2年当時には合理性があったものの、その後の法律改正等を踏まえると、株式保有の状況は大きく変化してきており、相続開始時点の株式保有割合が25%以上の大会社全てに、一律に、類似業種比準方式による評価の前提を欠くとまでは談じ難いと示唆した上で、株式保有特定会社に該当するか否かは、株式保有割合に加え企業の規模や事業の実態等を総合考慮して判断するほかないとも指摘した。

 その結果、株式評価に関して租税回避行為を危惧しなければならないとは言い難く、類似業種比準方式を用いるべき前提を欠く株式保有特定会社に該当するとも認められないと判示して、課税当局側の主張を斥けている。当局側は判決内容を不服として控訴した。

(2012.03.02 東京地裁判決、平成21年(行ウ)第28号)