満期保険金の申告に正当な理由はないと判断、差戻審が棄却
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:12/25/2013  提供元:21C・TFフォーラム



 養老保険の満期保険金を受け取った者が、法人負担分の保険料も一時所得の収入を得るための金額として申告したことに正当な理由があるか否かが争われた事件で、上告審から差戻しを命じられた福岡高裁(古賀寛裁判長)は、申告処理の妥当性を税務当局に照会することなく、課税額が少額となる申告をした事実関係が認められることなどを理由に、過少申告加算税の賦課決定処分が不当又は酷とまで認めることはできないと判示して、納税者側の主張を斥けた。

 この事件は、養老保険契約の満期保険金をめぐり、法人負担の保険料も一時所得の計算上、収入を得るための支出として申告したところ、原処分庁が保険料の2分の1相当の満期保険金を受け取った者に対する貸付金として経理処理された部分以外の部分の控除を否定、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、納税者が取消しを求めて提訴したのが発端となった。

 一審が納税者の主張を認容した後、控訴審は原処分を適法と判示した上で正当な理由を認めて過少申告加算税の賦課決定処分を取り消したため、納税者と原処分庁が共に上告したところ、最高裁も原処分を適法と判示する一方で、正当な理由の有無については差戻しを命じたため、福岡高裁が再度審理を行ったという事案である。
 
 つまり、満期保険金に係る一時所得の計算上、法人負担分の保険料も所得税法34条2項の「収入を得るために支出した金額」に当たるとした申告に、正当な理由があるか否かが争点になったわけだ。

 差戻審は、正当な理由が成立する場合の要件に触れた上で、納税者側が申告前に申告処理が妥当かどうかを税務当局に問い合わせず、課税額が少額となるような処理を採用して申告したものであるという原処分庁の主張を採用。その結果、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、過少申告加算税の趣旨に照らしてもなお納税者に過少申告加算税を賦課したことに不当又は酷になるものとまでの事情を認めることはできないことから、正当な理由があるとは認められないと指摘して、棄却している。結局、賦課決定処分に関する差戻し前の控訴審判決も取り消す判決結果となった。

(2013.05.30福岡高裁判決、平成24年(行コ)第7、8号)。