一時所得から控除できるのは所得者が負担した金額に限定
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:11/15/2011  提供元:21C・TFフォーラム



 養老保険契約の満期保険金額の受領をめぐって、法人負担の保険料も「収入を得るために支出した金額」に当たるか否かの判断が争われた事件で、福岡高裁(小山邦和裁判長)は収入を得るために支出した金額は一時所得の所得者本人が負担した金額に限られ、それ以外の者が負担した金額は含まれないと判断、一審判決を取り消す逆転判決を言い渡した。

 この事件は、契約者である法人と被保険者である原告らが保険料を2分の1ずつ負担した養老保険契約の満期保険金を原告らが受領した後、法人負担分も含む保険料全額を一時所得の「収入を得るために支出した金額」(所法34(2))に当たるとして所得税の確定申告をしたことに対して、原処分庁が法人負担の保険料は収入を得るために支出した金額に当たらないと否認、更正処分等をしてきたため、その取消しを求めて提訴した事案だ。

 その結果、一審の福岡地裁が、所得税法の文言からは一時所得から控除することができる保険料等の金額は、所得者本人が負担した金額に限られるか否か明らかではないとして、養老保険の満期保険金が一時所得となる場合、所得者以外の者が負担した保険料も満期保険金から控除できると解するのが相当である旨の判決を言い渡したため、原処分庁側が判決の取消しを求めて控訴したわけだ。

 控訴審は、所得税法施行令183条2項2号は所得税法34条2項の細則として制定されたものであるから、一時所得の金額の計算上、総収入金額から控除することができるのは一時所得の所得者本人が負担した金額に限られ、それ以外の者が負担した金額は含まれないという同項の解釈を踏まえるべきと指摘。

 その上で、納税者側の解釈は所得税法の根幹をなす基本原則に抵触する疑いがあると言わざるを得ないと判示して原審判決を取り消した。ただ、所得税基本通達34-4には誤解を生じかねないものがあるから納税者に正当な理由があると認定、過少申告加算税の賦課決定処分は違法である旨判示している。

(2010.12.21 福岡高裁判決、平成22年(行コ)第12号)