利子付きで返還された金員は貸付金利子ではないと判示
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:02/02/2010  提供元:21C・TFフォーラム



 引渡遅延による造船販売契約の解除に伴って、前払いを受けた一部売買代金に約定利子を付して返還した金員が、国内源泉所得となる貸付金利子に当たるか否かの判定が争われた事件で、大阪高裁(大和陽一郎裁判長)は法人側の主張を認容した原審判決を支持して貸付金利子には当たらないと判示、課税当局の控訴を全面的に斥ける判決を言い渡した。

 この事件は、船舶の売主が買主の外国法人と建造者との間で造船の販売契約を締結して売買代金の一部前払いを受けたものの、船舶の引渡遅延によって買主の外国法人から契約解除されたため、前払いされた一部売買代金に約定利子を加えた金員を返還したことが発端になったもの。

 この取引を原処分庁が貸付金に係る利子と認定、国内源泉所得に当たるとして源泉所得税の不納付加算税の賦課決定処分をしてきたことから、その取消しを求めて売主の法人が提訴したところ、原審が法人側の請求をすべて認容する判決を下したわけだ。そこで、課税当局がその取消しを求めて控訴したわけだが、課税当局は控訴審で、法人が一定期間使用収益し得る前渡金として交付を受けた分割払金は信用供与という性格を有するものであるから貸付金に当たると主張して、原判決の取消しを求めていた。

 これに対して控訴審は、原処分は取消しを免れないと断じた上で、法定解除に伴う既払金に付すべき法定利息の支払義務は、法定解除に伴う現状回復義務の一環として生じるものであるから、当事者の信用供与の意図に基づいて発生するものではないと解釈。原審同様、課税当局の主張を悉く斥け、納税者の主張を全面的に認容する判決を言い渡した。

(2009.04.24 大阪高裁判決、平成20年(行コ)第127号)