アスベストの除去費用は雑損控除の対象外と裁決
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:12/28/2009  提供元:21C・TFフォーラム



 自宅の取壊しの際に支払ったアスベストの除去費用が雑損控除の対象になるか否かの判断が争われた事案で国税不服審判所は、人為による異常な災害とみることはできないと判断、審査請求を棄却した。

 この事案は弁護士が審査請求していたもので、自宅を取り壊した際に支払ったアスベストの除去費用を雑損控除の対象に当たると解釈して行った確定申告に対して、原処分庁が否認、所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、その取消しを求めて審査請求していたという事案だ。

 つまり請求人は、アスベストの除去は石綿障害予防規則等に基づく法令が要請するものであり、納税者の意思に基づかない事象であることから、所得税法72条が定める災害に該当すると判断、その除去費用は雑損控除の対象になると主張して原処分の取消しを求めていたわけだ。

 これに対して裁決は、所得税法72条が定める災害を納税者の意思に基づかない事象と解釈するのは広きに過ぎると指摘。また、そのことのみをもって災害に該当するという考えは法解釈としても妥当ではないとも示唆。つまり、災害とは自然界に生じた天災ないしそれと同視すべき事象を指すものであるという解釈をしたわけだ。結局、アスベストの除去は法令に基づく要請であり、かつ除去のための費用負担もその当事者が受任すべきものということができるから、かかる法令に基づき費用負担が生じたこと自体を人為による異常な災害とみることはできないと判断して、弁護士が求めた審査請求を棄却している。

(国税不服審判所、2009.02.16裁決)