LPSは我が国の租税法上の法人に該当すると判示して棄却
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:09/20/2011  提供元:21C・TFフォーラム



 海外に設立された事業体・LPSが行う不動産賃貸業から生じた損失を出資者の不動産所得に係る損失として損益通算が認められるか否かの判断が争われた事件で、大阪地裁(山田明裁判長)は、LPSは我が国の租税法上の法人に該当すると認定した上で損益通算を否認、納税者敗訴の判決を言い渡した。
 
 この事件は、米国・デラウェア州に設立した不動産賃貸業を行うLPSに信託銀行を通じて出資した後、LPS側に生じた損失を不動産所得に係る損失として他の所得と損益通算して申告したところ、原処分庁がLPSを我が国の法人に該当すると認定して損益通算を否認してきたため、出資者がその取消しを求めて提訴していたもの。つまり、外国に設立されたLPSが我が国の租税法上の法人格が付与されるか否かが争点になっていた事案だ。

 これに対して大阪地裁は、法人に該当するか否かは、実体法的にはその事業体が1)構成員の個人財産とは区別された独自の財産を有し、2)契約等の法律行為を行い、権利を有し、義務を負う――能力等を有するか否かで判断するのが相当と解釈。また、手続法的には3)事業体の名で訴訟当事者となり得ることも、法人とみなされる事業体に当然に付与される能力等の一つであり、法人該当性の判断基準の一つになるとも示唆した。

 その判断基準に沿って検討すれば、LPSは構成員の個人財産とは区別された独自の財産を有し、その名の下に1)不動産等の登録ができ、2)契約等の法律行為を行い、権利を有し、義務を負うことができるとともに、3)訴訟当事者にもなり得ると認定。結局、自然人以外のもので、権利義務の主体となることができるから、我が国の租税法上の法人に該当すると認定して納税者側の主張を斥けている。納税者側は判決内容を不服として控訴している。

(2010.12.17 大阪地裁判決、平成19年(行ウ)第78号)