破産管財人自らが報酬の支払者、源泉徴収義務が必要と判示
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:01/31/2011  提供元:21C・TFフォーラム



 破産管財人を務める弁護士が受領した報酬が弁護士報酬に当たるか否か、また破産会社の元従業員等に支払われた退職金等について源泉所得税の納税義務があるか否かの判断が争われた上告審で、最高裁(古田佑紀裁判長)は、破産管財人は自らの報酬の支払者に当たるため源泉所得税の納付義務があると判示する一方で、元従業員等に支払った退職手当等の支払者には該当せず、源泉所得税の納付義務は負わないとする判決を言い渡した。

 この事件は、破産管財人に就いた弁護士が自らの管財人報酬の支払いを受けるとともに、破産債権である元従業員らの退職金を支払ったことに対して、破産管財人は報酬、退職手当等それぞれの支払者に当たると原処分庁が判断、源泉所得税の納税告知処分、不納付加算税の賦課決定処分をしたことから、弁護士が破産管財人には源泉所得税等の徴収義務が存在しないとの確認を求めるとともに、源泉所得税等の債権が財団債権でないことの確認を求めて提訴したことが発端になったもの。

 しかし、一審(大阪地裁)、二審(大阪高裁)いずれも、管財人報酬は弁護士業務に関する報酬等に当たると判断、源泉所得税の納税義務が存在しないことの確認を求める請求が棄却したため、上告していた事案だ。

 最高裁はまず、弁護士(破産管財人)はその報酬に係る支払者に当たり、自らの報酬の支払いの際に源泉徴収義務を負うと解釈するとともに、破産管財人は破産財団の管理処分権を破産者から承継はするものの、破産宣告前の雇用関係に基づく退職手当等の支払いに関しては、支払いの際に所得税の源泉徴収をすべき者としての地位を破産者から当然に承継すると解すべき法令上の根拠はないと指摘。

 その結果、破産管財人は、元従業員等に支払った退職手当等については支払者には当たらず、破産債権である退職手当等の債権に対する配当の際にその退職手当等に対する源泉徴収義務を負うものではないと解するのが相当であるという判断をした。

(2011.01.14  最高裁第二小法廷判決、平成20年(行ツ)第236号)