金融先物取引に絡む和解金は実損害補填の損害賠償金と認定
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:01/19/2010  提供元:21C・TFフォーラム



 金融先物取引に関して商品取引員である会社から受け取った和解金が、商品先物取引会社の不法行為に基づく損害賠償金として非課税所得に該当するか否かの判定が争われた事件で名古屋地裁(増田稔裁判長)は、実損害を補填するための損害賠償金の性格を有するものであるから非課税所得になると判断、課税処分の取消しを命じる判決を言い渡した。

 この事件は、原告(納税者)が商品先物取引に関して、商品取引員である会社側から受け取った和解金450万円余を所得に計上せずに確定申告をしたことが発端になったもの。これに対して原処分庁が、この和解金を雑所得と認定して更正処分の上、過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、納税者側が和解金に係る雑所得を除いて算出した税額を超える部分及び賦課決定処分の取消しを求めて提訴していたという事案だ。

 つまり、商品先物取引会社から支払われた和解金が不法行為に基づく損害賠償金に当たるか否かが争点になった事案だが、原処分庁は、商品先物取引会社に適合性の原則違反、説明義務違反、新規委託者保護義務違反等々の事実はなく、不法行為責任が認められないことから、和解金の性質は一種の紛争解決金に過ぎず、雑所得に該当すると主張していた。

 これに対して判決は事実認定の上、納税者が被った損害は商品先物取引会社側の不法行為によるものであり、その損害は民法715条に基づく損害賠償責任を負うと認定するとともに、和解金は過失相殺後の損害賠償金の範囲内であるとも指摘。結局、和解金は納税者側に生じた実損害を補填するための損害賠償金としての性格を有していることから、所得税を課すことができない所得であると判断、原処分を取り消す判決を言い渡した。

(2009.09.30 名古屋地裁判決、平成19年(行ウ)第94号)