保険料は本人負担分だけでなく全額控除可能と控訴審も判断
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:02/16/2010  提供元:21C・TFフォーラム



 契約者と被保険者が2分の1ずつ支払った養老保険の保険金の全額を一時所得の金額の計算上控除し得る「収入を得るために支出した金額」に当たるか否かの判断が争われた事件で、福岡高裁(森野俊彦裁判長)は原審の判断を支持して保険金全額が控除し得るために支出した金額に当たると判示、課税当局側の主張を斥ける判決を言い渡した。

 この事件は、契約者を会社、被保険者を代表者等その親族、受取人を代表者等とし、会社と代表者らが保険料を各2分の1ずつ負担した養老保険契約に基づいて満期保険金を受領した代表者等が、会社が負担した保険料も含めた保険料全額を一時所得の金額の計算上控除し得る「収入を得るために支出した金額」に当たると考えて、所得税の確定申告をしたことが発端になったもの。

 しかし原処分庁が、会社負担の2分の1の保険料は「収入を得るために支出した金額」には当たらないと否認、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、その取消しを求めて提訴したところ、原審が納税者の主張を全面的に認容したことから、原処分庁が控訴、原審判決の取消しを求めていたという事案だ。

 これに対して控訴審は、養老保険契約等に基づく満期返戻金が一時所得とされる場合に、その一時所得の金額の計算上控除される保険料等は、その一時金を取得した者自身が負担したものに限られるのか、それともその養老保険等の受給者以外の者が負担していたものも含まれるのか所得税法34条2項からは必ずしも明らかではないと指摘。しかし、同施行令183条2項2号が生命保険契約に基づく一時金が一時所得となる場合、保険料等の総額を控除できると定めており、同文言を素直に読むと所得者本人負担分に限らず保険料等全額を控除できると解釈せざるを得ないと判示、課税当局の主張を全面的に斥けている。

(2009.07.29福岡高裁判決、平成21年(行コ)第11号)