養老保険節税で注目判決
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:10/01/2009  提供元:21C・TFフォーラム



 養老保険の全額損金プランをめぐる裁判で福岡高裁はこのほど、満期保険金の一時所得の計算上控除できる必要経費の範囲に、法人が負担した保険料も含まれるとする一審判決を支持する判決を下した。

 福岡県の会社経営者A氏は、会社を契約者、自らを被保険者とする養老保険に加入し、死亡保険金受取人を会社、満期保険金受取人を被保険者とすることで、会社が負担した保険料の2分の1を保険料として損金処理、残りの2分の1は被保険者への貸付金として処理していた。

 その後、満期保険金を受取ったA氏は、一時所得の計算にあたって会社負担分も含む保険料全額を必要経費として控除し確定申告したところ、税務署は「会社が負担した2分の1の保険料は控除できない」として更正処分。A氏はこれを不服とし裁判となった。

 一時所得の計算に際して収入金額から控除できる「保険料の総額」には、「その一時金又は満期返戻金等の支払を受ける者以外の者が負担した保険料も含まれる」(所得税基本通達34-4)とされている。

 一審の福岡地裁では、「一時所得の計算上控除できる保険料は、本人が負担した保険料および、会社が負担した保険料の場合は給与課税された保険料に限られる」とする国の主張に対して、「一時所得の計算上控除できる保険料は法人が支払った保険料のうち給与課税されたものに限られる」とする内容は関連条文から読み取ることはできないとし、保険料全額を経費にできるという原告の主張を認めている。

 続く二審で国は、「同通達の文言通り保険料の総額が一時所得からの控除対象になると解釈することは誤り」と主張したが、福岡高裁は「その文言上からは所得者以外の者負担した保険料も控除できることは明白」として一審判決を支持。国の控訴を棄却した。法文について解釈と文言のどちらを重視するかが争われている同裁判、最高裁による最終判断に注目が集まる。

(福岡高裁判決、平成21年(行コ)第11号)