移転補償金の取扱いを巡る事件で最高裁が控訴審に差し戻し
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:04/13/2010  提供元:21C・TFフォーラム



 収用に伴う移転補償金の全額を一時所得に算入すべきか否かの判断が争われた事件で最高裁(藤田宙靖裁判長)は、その全額を一時所得に算入すべきと判断して納税者の主張を棄却した控訴審判決には法令の違反があると判断して破棄するとともに、更に審理が必要と指摘、控訴審に差戻しを命じる判決を言い渡した。

 この事件は、県が施行する道路事業のために所有地を売却して、地上建物に係る移転補償金の支払いを受けた納税者が、租税特別措置法33条3項2項の補償金の規定を適用して申告したところ、原処分庁がその移転補償金の金額は一時所得の金額の計算上総収入金額に算入すべきであるとして更正処分をしてきたため、原処分には同措置法、所得税法44条の解釈適用の誤りがあると主張して、上告審までその取消しを求めてきた事案だ。

 最高裁は、租税特別措置法33条、所得税法44条を改めて解釈するとともに、上告人が主張する事実関係を考慮した上で、移転補償金のうち少なくとも居宅に係る部分については、取壊工事費に相当する部分等のうちに曳行移転の費用に充てられた部分がある時は、その部分は実質的に交付の目的に従って支出されたものとして所得税法44条の適用を受け、またそれ以外の部分についても、同条又は租税特別措置法33条1項の適用を受ける部分があり得るものというべきであるから、移転補償金のうちに特例の適用を受ける部分があるかどうかなどの点について十分に審理することなく、居宅等が取り壊されずに現存していることを理由に直ちに、その全額を一時所得の金額の計算上総収入金額に算入すべきであるとした控訴審には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反があるから破棄を免れないと判示、更に審理を尽くさせるため、控訴審に差し戻した。

2010.04.03最高裁第三小法廷判決、平成20年(行ヒ)第419号)