抵当権の設定等がないことを理由に特例の適用を否定
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:12/16/2014  提供元:21C・TFフォーラム



 資産の譲渡が保証債務を履行するための資産の譲渡に該当するか否かの判断が争われた事件で国税不服審判所は、他人の滞納税額のために不動産が差し押さえられ、その売却代金を滞納税額の支払いに充てたとしても、保証契約を締結し、抵当権を設定したものではないことを理由に、審査請求を棄却した。

 この事件は、所有不動産の譲渡代金の一部を知人が経営する法人の租税債務の代位弁済に充てたことを理由に、保証債務履行のための譲渡に該当するとして更正の請求をしたところ、原処分庁が代位弁済は立替払いであり、譲渡は「保証債務履行」のための譲渡には該当しないとして更正の請求を否定してきたため、その全部取消しを求めて審査請求した事案である。

 請求人側は、相続税の延納申請に係る担保土地に対する国税局長による差押登記は、知人が経営する会社の租税債権の回収を図るために、請求人の同意を得ずに一方的にされたものであり、債務保証をしたくないと考えても許されない状態にあったのであるから、救済されるべきであると主張して全部取消しを求めたわけだ。

 しかし裁決は、亡父等の債務に係る債権者からの請求を逃れるため、名義を知人の会社に変更して虚偽の外観を作出した際に、国税局長が差し押えたものであり、それによる不利益は免れないものの、その原因は虚偽の権利の外観を自ら作出したことにあり、善意の第三者に対して虚偽表示の類推適用により権利の外観が虚偽であることが対抗できなかった結果にすぎないから、そのような者を予期に反して求償権の行使が不能になった保証人と同一の利益状況とみて救済を図る必要性は認められないと指摘した。結局、債務の履行を強制されるわけでもなく、保証人や担保権設定者と立場を大きく異にしており、特例を適用する前提を欠くと判断して、棄却している。

(2014.02.04国税不服審判所裁決)