学院長の辞任には法的地位に重大な変動があったと認定
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:07/12/2011  提供元:21C・TFフォーラム



 専修学校の学院長の辞任に伴って支払われた金員が退職金に当たるか役員賞与に当たるかの判定が争われた事件で、京都地裁(瀧華聡之裁判長)は、月給の56%減額、嘱託職員雇用契約という雇用形態の変更の事実等を鑑みれば、辞任後の法的地位には重大な変動があったと認定、法人側の主張を全面的に認める判決を言い渡した。

 この事件は、コンピュータ関連の専修学校の理事長(学院長)が退任、最高顧問就任を理事会決議したことを踏まえ、学校法人側が退職金を支払うとともに源泉所得税を納付したところ、原処分庁が賞与認定の上、源泉所得税の納税告知処分等をしてきたことが発端になったもの。そこで、学校法人は源泉所得税等の納付後、納税告知処分の取消し、自主納付分に係る過誤納金の還付を求めて提訴していた事案である。

 つまり原処分庁側は、1)役員(理事長)の地位に変動がない、2)辞任後も名実ともに理事長の職務に従事していた、金員の支払いが3)労務の対価の一部の後払いの性質を有しておらず、一時金として支払われた事実等がないという事実認定とともに、退職金の支給後も引き続き理事長等の地位に就いている事情等を踏まえ、退職の事実は認められないと主張していた。

 これに対して判決はまず、退職と同視し得る事情の有無を判断する際に、学院長の地位ないし職務に係る変動を判断要素とすることも許されると示唆。その結果、辞任後は教育長として行う象徴的な業務に限定され、給与等の対価は支払われず、従前の職務内容及び法的地位と性質を大きく異にしている事実を評価。給与も従来のものから約56%減額している上、嘱託職員雇用契約という雇用形態になったことを鑑みれば、その法的地位には重大な変動があったと認定した。

 また、金融機関からの借入れの際の連帯保証も金融機関の求めによるものであり、不自然とはいえないと指摘。さらに、譲渡損失との損益通算が動機にあったとしても、同時期の退職金の支給が違法になるとまではいえないと原処分庁側の主張を斥けている。結局、理事長の地位の辞任に伴い、その性質、内容、労働条件等に重大な変動があったと認定、国側の主張を斥けている。事件は一審で確定した。

(平成23年4月14日京都地裁判決、平成20年(行ウ)第23、27号)