社会通念上一般的な海外旅行ではないと認定、審査請求を棄却
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:08/19/2011  提供元:21C・TFフォーラム



 従業員を参加者とする海外への社員旅行が、社会通念上一般的に行われているレクリエーション行事(福利厚生)に該当するか否かの判断が争われた事件で、国税不服審判所は会社側が負担した従業員1人当たりの旅行費用の額が、他企業の1人当たりの会社負担額を大きく上回っていることを理由に、社会通念上一般的に行われているレクリエーション行事の範囲と認めることはできないと判断、審査請求を棄却した。

 この事件は、土木建築工事の請負業を営む審査請求人が福利厚生費として損金に算入した従業員等を参加者とする海外旅行費用を原処分庁が多額であることを理由に、海外旅行によって従業員が受けた経済的利益を給与と認定、源泉所得税の納税告知処分等をしてきたことが発端になったもの。そこで請求人側が、旅行期間、従業員のほぼ全員が参加している状況等々を理由に、社会通念上一般的に認められる範囲内のレクリエーション行事であるから旅行費用は給与に当たらないと主張して、原処分の取消しを求めた事案だ。

 これに対して裁決は、レクリエーション行事として行う海外旅行が、所得税基本通達36-30が定める社会通念上一般的に行われていると認められるものか否かの判定に当たっては、企画立案、主催者、旅行の目的・規模、従業員の参加割合、使用者や従業員の負担額等々を総合的に考慮すべきであるが、むしろ、参加従業員の受ける経済的利益つまりレクリエーション行事における使用者の負担額が重視されるべきと指摘。

 その結果、請求人が負担した従業員1人当たりの旅行費用は、海外旅行を実施した他企業の1人当たりの会社負担金額を大きく上回る多額なものであるから、少額不追求の観点から強いて課税しないとして取り扱うべき根拠はないと判断、審査請求を棄却している。

(国税不服審判所、2010.12.17裁決)