保険金から控除できる保険料は本人負担のみと最高裁が判示
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:01/16/2012  提供元:21C・TFフォーラム



 養老保険契約の保険期間の満了に伴って支払われた満期保険金額を一時所得として申告する際、保険料の本人負担分に加え法人負担部分も一時所得の「収入を得るために支出した金額」として控除できるか否かの判断が争われた事件で、最高裁(須藤正彦裁判長)は13日、収入を得るために支出した金額は一時所得の所得者本人が負担した金額に限られ、それ以外の者つまり法人が負担した保険料は含まれないと判断、一審・二審判決を取り消す逆転判決を下した。

 ただ、過少申告加算税が課されない場合の「正当な理由」がある場合に該当するか否かについては更に審理を尽くさせるため、控訴審に差戻しを命じている。
 
 この事件は、契約者である法人と被保険者である原告らが保険料を2分の1ずつ負担する旨の養老保険契約を交わした後の保険期間満了に伴って支払われた満期保険金の申告の際に、法人負担分も含む保険料全額を一時所得の「収入を得るために支出した金額」(所法34条2項)に当たると判断して申告したところ、原処分庁が法人負担分は収入を得るために支出した金額に当たらないと否認して更正処分等をしてきたため、その取消しを求めて提訴されたもの。

 その結果、一審・二審とも所得税法上の文言からは、一時所得から控除できる保険料等は所得者本人が負担した金額に限られるか否かが明らかでないと指摘、原処分を取り消す旨の判決を言い渡したため、原処分庁側が控訴、上告して一審判決の取消しを求めてきたという事案である。

 最高裁は事実関係を整理した上で、所得税法34条2項が定める一時所得の「収入を得るために支出した金額」に該当するためには、収入を得た個人が自ら負担して支出したものといえる場合でなければならないと解釈。その上で、保険料のうち法人負担部分は所得税法34条2項の「収入を得るために支出した金額」に当たるとは言えず、保険金に係る一時所得の金額の計算の際に控除することもできないと指摘、納税者側の請求を認容した原審の判断には判決に影響を及ぼす明らかな法令違反があると判示した。ただ、過少申告加算税の賦課については正当な理由があるか否かを更に審理する必要があると示唆、控訴審に差戻しを命じる判決結果となった。もう一件、上告中の類似事件もあるが、同様の判決内容となろう。

(2012.01.13最高裁判決、平成21年(行コ)第12号)