LPSは我が国の租税法上の法人に該当しないと判示、国側敗訴
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:07/17/2012  提供元:21C・TFフォーラム



 米国・デラウェア州に設立された事業体・いわゆるLPSが行う不動産賃貸業から生じた損失を出資者の不動産所得に係る損失として構成員課税が認められるか否かの判断が争われた事件で名古屋地裁(増田稔裁判長)は、我が国の私法上(租税法上)の法人には該当しないと判示して原処分を否定、納税者勝訴の判決を言い渡した。

 この事件は、我が国の投資家が外国信託銀行を受託者とする信託契約を介して出資したLPSが行った米国内の中古集合住宅の貸付けに係る所得が所得税法26条1項の不動産所得に該当すると判断、その減価償却等の損金を他の所得と損益通算をして所得税の申告をしたことが発端となった。

 これに対して原処分庁が、不動産所得に該当しないという判断から損益通算を否認、所得税の更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分を行うとともに、その後の更正の請求に対しても更正すべき理由がない旨の通知処分をしてきたため、出資者らがその取消しを求めて提訴した事案である。

 先に判決が言い渡された大阪地裁、東京地裁と同様、米国・デラウェア州に設立されたLPSは我が国の租税法上の法人格が付与されるべきか否かが争点になった。というのも、法人とみなされれば損益通算が否定されるし、法人格がないと判断されれば、納税者が主張するように構成員課税つまり損益通算が認められるからだ。

 これに対して名古屋地裁は、原告・被告の主張の殆どを失当と斥けながらも、実質的な観点から米国デラウェア州LPS法に基づくLPSの成り立ち、組織、運営及び管理等の内容を検証した上で、最終的には各LPSは我が国の法人と同様に損益の帰属すべき主体(その構成員に直接その損益が帰属することが予定されない主体)として設立が認められたものということはできないと認定して我が国の租税法上の法人には該当しないと判示、納税者勝訴の判決を言い渡している。

 大阪地裁納税者敗訴、東京地裁納税者勝訴に続き、今回の判決で地裁レベルでは納税者側の2勝1敗となったわけだが、いずれも敗訴した側が控訴しており、控訴審がどのような判断を下すか注目される。だが、最終的な決着は最高裁まで見守る必要がありそうだ。

(2011.12.14 名古屋地裁判決、平成19年(行ウ)第50号)